今回の1級の結果について振り返ると、「納期・生産管理」および「安全・環境」の得点率が60%を下回ると低い結果となっています。なお、大きな傾向としては過去も同様です。
「納期・生産管理」では、キャッシュ・コンバーション・サイクルの問題の得点率が低くなっています。
1級は主に管理者が対象ですが、それは「製造課の経営者」という位置づけですので、経営観点からもキャッシュ・コンバーション・サイクルは、ぜひ理解してください。
例えば、自社の職場の在庫が一日分でどのくらいの金額になるのか改めて把握してみましょう。何千万でしょうか?あるいは何百万でしょうか?いずれにせよ、決して小さくはない数値となります。これが、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの計算式の1日あたりの売上原価に相当します。このように、現場で起こっている事象と、管理指標及び数値と経営指標を関連づけて考えていくことが、管理者の大きな役割の一つなのです。
また、「安全・環境」の得点率も低めですが、特に安全は職場の基本であることから、日常の安全遵守行動の徹底に加え、知識面もしっかり高めていくことが大切です。その観点から、理解度を高めて頂きたいと思います。
私がコンサルティングを行っているC社では、工場更新プロジェクトを機会に、工程及び業務、そしてサプライチェーンの大改革を行いました。そこで問題視されたことは、競合に比べてキャッシュ・コンバーション・サイクルの日数が45日も長かったということです。
これは、この会社の売上原価から換算すると、約60億円のキャッシュとなります。
平易に言えば、競合より60億円多い在庫で運営しており、その分、経営としては運転資金が必要となっていたのです。この金額は、更新する工場の建屋建設費の多くを充当できるレベルです。
このようにキャッシュ・コンバーション・サイクルを考える意味は大きく、このことから、在庫削減・リードタイム短縮を目指し、生産計画をはじめ、サプライチェーンのトータルな改革が始まり、活動後大きな経営成果をえることができました。皆さんの会社・工場も是非一度学習した内容をベースに算出し、課題設定していただけたらと思います。
2級の結果を振り返ると、得点率が低いのは「品質」および「納期・生産管理」となっています。
「品質」では、工程能力指数(Cp値)の計算と、判断や品質改善の進め方に関する問題で得点率が低くなっています。特に量産工程を扱う皆さんにとって、品質管理・保証の中で、工程能力指数(Cp値)の考え方・算出方法・判断方法の習得は必須と考えます。
試作段階では、様々な寸法などの管理値もバラつかないことが多いですが、量産化以降、バラつきは必ず起こります。そのバラツキの程度や状況により、管理レベルやその対策も異なるからです。実践的な見地からも大変重要な要素です。
また、「納期・生産管理」では、生産計画や需要予想に関する部分や、在庫の区分や考え方などの部分の得点率が低い傾向にあります。2級の対象は主に監督者ですが、生産現場の実作業以外に、その上位にあたる生産管理や生産計画の情報がどのような考え方で形成されていくかを理解しておく必要があります。理解が進むと広い範囲や部門横断の改善に結びつきますので、ぜひ理解度を高めていただきたいと思います。
前述した「工程能力指数」について、私がコンサルティングを行っているD社でのエピソードをご紹介したいと思います。
D社は取引先で納入不良が散発的に発生しており、品質改革に取り組んでおりました。このプロジェクトは全社的な取り組みで、品質方針や仕組み、人財育成など幅広く展開していましたが、散発する取引先での納入不良の要因を辿ると、「工程能力」の考え方が現場で欠如していることがわかってきました。
バラツキを抑えて「つくり込み品質」で品質を向上させるという考え方(=源流品質管理・保証)ではなく、検査で品質を維持するという考え方で、現場の運用が行われていました。当然、つくり込みの品質は向上せず、バラツキを製造条件で抑え込むことも行われませんでした。
突き詰めると、「X-R管理図」は記載していたが、ただ記載しているだけで、現場の運用に「工程能力指数」で管理するというバラツキの概念がなく、バラツキが問題とも感じていなかったようです。
その後、D社は全社的に「つくり込み品質向上活動」を行い、バラツキを自工程で管理し良品品質条件の改善を行っていくことで、品質レベルが向上していきました。また、職場で品質の「問題」を感度良く捉える人口を増やしていく取り組みが進んだことも、副次的な効果として得られました。
3級の結果を振り返りますと、「コスト」と「納期・生産管理」の得点率が60%程度と低くなっています(コスト:61.2%、 納期・生産管理:63.8%)。他の単位が70%前後であることと比較しても、「コスト」と「納期・生産管理」単位の理解をさらに深めていただきたいと思います。
「コスト」では、各種分析手法や管理手法に使われる計算問題が出題されますが、誤答が多く見られます。計算式は暗記するのではなく、「なぜそのように計算するのか」の意味を再度理解するように努めてください。計算式の意味を理解することで、分析手法や管理手法の理解がさらに深まります。
「納期・生産管理」では、皆さんの現場の日程計画がどのようにして作られていくのか、そしてそれに伴う部品の手配、生産進度管理について出題されます。ただしこれらは、皆さんが直接関わっていない内容もあり、理解しにくいところも多いと思います。しかし、これらを理解することで、納期遵守の意味や関連部門の動きがわかるようになります。そこから、納期意識をさらに向上していただきたいと思います。
私がコンサルティングに入っているA社では、「決め打ち型の改善(全体を見ずに、目に付いた改善を目に付いた順に改善する)」からの脱却をめざし、現場リーダーはまず現状分析の手法(タイムスタディー、ワークサンプリング、編成効率など)を学びました。
そして学んだ手法をもとに、現場全体を俯瞰的にとらえ、ロスを定量的に把握し、改善すべき項目の優先順位を決め、改善活動を進めています。
皆さんの改善活動はいかがでしょうか。ぜひ、3級で学んだ知識を活用して、現場を俯瞰的に見て改善活動を進めていただけたらと思います。
ベーシック級の結果を振り返りますと、「品質」の得点率が58.9%と低い傾向が見られます。他の単位は全て60%以上であり、その中でも「役割」は83.3%とかなり高い得点率になっていました。このことから、現場でのものづくりをきちんと行っていくための役割や、ものづくりの基礎知識は十分理解されていると思われます。
それに対して、お客様に向けて、最も重要な要件である品質に関しては、まだまだ学習不足であることが心配されます。
特に、品質の維持管理や、不良防止の活動についての理解不足が多く見受けられます。品質の重要性については理解されていると思いますが、そのために自分は日々何をすべきかを再度テキストを熟読し、学習していただければと思います。
また、品質改善を進める時にも、使用するツールを理解しているのと理解していないのでは、改善の効率的な進め方ができるかどうか、いい結果がだせるかどうかに大きな影響があります。
品質改善のツールとしてはQC7つ道具がありますので、これらもよく理解してぜひ活用してみて下さい。
先日、訪問したB社では、さらなる品質向上を目指して、ベテランの「カンコツ」を解明する取組みを行いました。この時に活躍したのは若手の作業者の方々でした。この方々が、ベテランと自分は「具体的に」なにが違うのか、ベテランは何ができて、自分は何ができないのかを、ベテランとマンツーマンで議論や作業観察を行い、「カンコツ」解明をしました。
長い経験が必要と思われた「カンコツ」も、若手自ら理解できるまでベテランとやり取りすることで、ずいぶんと明確になり、ベテランの皆さんも驚かれていました。ベテランのようにはできないとあきらめずに、このような取組みも行いながら、ぜひ、さらなる品質向上へ挑戦していただきたいと思います。
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