今回の検定においては、「コスト」の得点率が大きく落ち込んだこと(61.1%⇒48.4%、マイナス12.7ポイント)や、また「納期・生産管理」の得点率が低いことが見受けられました。
また、得点率の低い点を細かく見ると、「品質」では『管理図の着眼点』『実験計画法の注意点』、「コスト」では『原価構造における機会ロス』『売上差異分析の計算』『設計や生産準備時点での問題』、「納期・生産管理」では前回同様に『キャッシュコンバージョンサイクル計算』などがあげられます。
前述のとおり、今回、「コスト」のカテゴリの問題について、得点率は低めです。しかしながら、「コスト」は事業上、また、管理者としても大切なテーマです。生産マイスターは、通信教育での学習ではありますが、その目的は日常の業務をレベルアップさせることです。各問題や知識を自分の業務と重ね合わせ、学習を進めてください。
また、このカテゴリについては、特に計算問題の正答率が低い傾向にありますが「コスト」の考え方では、数値を扱い、かつ、その数値を用いて計算を行うことに意味があります。単に数式を暗記し、与えられた数値を投入して計算するのではなく、その数式が何を表しているのかという意味を学び、理解しましょう。その上で算出された数値は価値が高いものとなり、業務に活用することができます。
例えば、工場の生産能力が足りないことによる機会損失金額計算を行う場合、単価と生産量を切り分け、且つ、損失の意味を考えると、おのずからその数式が導き出されるでしょう。数式の暗記ではなく、原理原則の理解をしてください。
このカテゴリの中でも、毎回正答率が低いのが、生産管理分野の「キャッシュコンバージョンサイクル計算」です。1級は管理職を対象にした内容であり、製造課の職制(=製造課の経営者)という位置づけです。経営者という視座からも、キャッシュコンバージョンサイクルは理解して頂きたいものです。ぜひ、自社・自職場の生産活動におけるキャッシュコンバージョンサイクルを計算してみてください。1日分の在庫はいくらなのか?在庫がどのくらい経営にインパクトがあるのか?を把握すると、それが決して小さくはない数値であることがわかります。
これらは、経営を考える上で、非常に重要な側面である資金繰りを理解することになりますので、1級を受検される皆様にはぜひとも身につけていただきたいポイントです。
私がコンサルティングに入っているT社では、赤字が続き、且つ、運転資金も十分とは言えず親会社から借金をして会社を運営していました。会社の中身を見ると、どの製品がどのくらい儲かっているか、部分的にしかわからない状態でした。
改善の一歩として、まず、コストの側面から「どの製品がどのくらい儲かっているか?」を把握するため、製品種類ごとに標準原価を設定した上、実績の差を把握して改善するという管理のサイクルを回すことにしました。
その中では、前述のようなコスト計算を行い、業績悪化の原因が「単価の差」だったのか、あるいは「生産量(受注量)と計画との差」にあったのかというように切り分けて、コストの数値を見ていきました。これは有効な次の手を打つために必須です。単価は売値や1個当たりコストで決まり、生産量は販売数や生産実行数などで決まります。各々対策の打ち手と対象者がことなるので、切り分けて目標達成の活動を行うのです。
もちろん、管理者はコストに限らず、あらゆるものごとを分析的に診て、対策を打つことが求められます。上記に述べたのはその代表例です。生産マイスターの学習内だけでなく、実務でも分析的に、また、原理原則に基づき、ものごとを診る習慣を心がけましょう。
2級の結果は、第13回(前回)に比べて7.7ポイント、合格率が上がっていました(53.6⇒61.3%)。この要因としては、「コスト」の得点率向上が大きく影響していると思われます。
とはいえ、「コスト」の計算問題「パフォーマンスロスの計算」「設備総合効率の計算」などの計算問題の正答率は下がっています。
「コスト」の改善は現場の実態をまず数値で見えるようにすることから始まります。よって、その計算を実務でも正しく行うことが重要です。数値として明らかにしたあとは、それを元に、ロスの発生原因の深掘りと原因を根治する対策を打っていきます。
計算問題の間違いが多いということは、計算の意味合い・目的と、その構造があまり理解されていないのではないかと思われます。生産マイスターの出題形式からいえば、単純な計算ミスというよりは、「なぜそれを計算するのか」「どうやって計算するのか」について理解されていないことが原因と思われますので、これらの考え方を基に確認や復習をしましょう。
また、計算の意味合いを構造的に理解するには、その数値の単位の持つ意味も考えると理解が進むこともあります。
例えば、「総合能率(総合パフォーマンス)」の計算式について考えてみましょう。
単位は「パーセント(%)」ですが「%」とは、全体を100としたときの割合です。これを計算するには分母(全体)分子が同じ単位である必要があります。
例:出来高工数1520MHを生産するのにその生産に必要だった就業工数の合計(総就業工数)が1890MHだとすると、総合能率は、
1520÷1890×100=80.4%(小数第二位以下四捨五入)
と算出されます。またこの出来高を生み出すためにどれだけの作業時間が必要だったかを計算するには、総就業工数から会議や手待ちがあって作業できない時間を引いた作業工数を求めることになります。その作業工数が1780MHだったとします。そうすると工数稼動率は、
1780÷1890×100=94.2%(小数第二位以下四捨五入)
となります。
また作業能率(作業パフォーマンス)は 出来高工数÷作業工数×100と計算し、
1520÷1890×100=80.4%(小数第二位以下四捨五入)
となります。
このように「就業工数」と「作業工数」と「出来高工数」の意味を構造的に理解していれば、「工数稼動率」の意味や「作業能率(作業パフォーマンス)」の意味も理解できるでしょう。
やや細かなことを言いましたが、ものづくりや製造は、工学的な技術という「科学(サイエンス)」を扱って製造や作業を行い、製品を製造しています。したがって、その管理や問題解決は必ず「論理」と「数値」の世界になってきます。よって、この論理と数値で考える力がついてくると改善なども進んでいきます。
例えば、工場でよくある会話として、「不良が多くて大変だ~」などがあると思いますが、これを少し科学的に言うと、「不良が2.0X %あり、手直しに、**時間を要しており、大変な工数をつぎこんでいる。不良の原因はAとBが主に考えられ・・・・」というような、「論理」と「数値」によったモノの見方・考え方・伝え方が出来てくると、現場のメンバーのレベルも上がっているといえるでしょう。また、これらの言動を職場で習慣化すると、メンバーも科学的にモノが見られる・考えられるようになり、良い現場のチームになれることと思います。
第一線監督者、すなわち「現場の経営者」として、2級を学習するみなさんには、ぜひ率先してこうしたモノの見方・考え方・伝え方を習得し、現場に普及させてください。
前述したとおり、「数値」と、それを算出し「見える」ようにするということは、実務にとって非常に大切です。
私がコンサルティングに入っている会社でのエピソードをお話しします。
G社は機械組立を中心とした工場であり、ライン作業を行っています。組立作業はセル式の工程のものもありますが、多くはライン式の工程であり、工程は人が中心のものと、自動化されたものが存在します。
このような状況で、伸びない生産性を改善するためにプロジェクトは始まりました。多品種ラインで変わっていくボトルネック工程の改善も行いつつ、設備稼働率の見える化、ラインバランス効率の見える化、各工程のパフォーマンスロスのリアルタイムでの見える化を行い、このあと短いサイクルでの改善を行うことで、止まっていた生産性は28%改善されました。
このように、通常、生産においては、「数値化」⇒「見える化」⇒「ロスの原因追及」⇒「改善実施」と進めることで、さらなる生産性向上を実現します。すなわち、生産マイスターでも学んだとおり、「数値化」「見える化」「計算」ということは非常に大切です。現場の要である第一線監督者が理解するべき計算手法や数式はたくさんあり、学習に困難を覚えることもあるかと思いますが、日々の活動と結びつけながら考え、理解を深めていってください。
今回の結果については、第13回に比べて、平均点は 63.4 点→63.9、合格率は58.4%→57.6%とほぼ同等でした。
ウイークポイントとしては、以下のような点が見られました。
「役割」のカテゴリの問題において、「ムダ=実績-標準」、「ムダ=目標-標準」という2つの「ムダ」を理解していない方が多かったようです。これは現場リーダーとして必ず理解するべき内容です。「ムダ」の改善には2つの概念があり、1つは標準をきちんと遵守する「維持管理」、もう1つは標準をさらにレベルアップ(目標に近づける)する「改善管理」です。この2つを分けて意識し、「ムダ」の改善を進めることが重要です。
「品質」のカテゴリの問題では、『顕在不良と潜在不良』『不良ゼロへの手順』『新QC7つ道具』についての理解が低かったようです。特に『新QC7つ道具』は品質改善において非常にわかりやすく役に立つ手法です。こちらも現場リーダーとしては、知っておくべき必須の内容になります。
「コスト」のカテゴリの問題では、『製造原価構造の計算』『ワークサンプリングの計算』、「納期・生産管理」カテゴリの問題では『製作手配』についての理解が低かったようです。 毎日の生産活動で使われる計算ではないので、なかなか理解がしにくい内容と思いますが、今より少しでも高いレベルの現場を目指すために必要な内容です。ぜひ、その計算式の意味を理解するようにしましょう。計算式の意味を理解すれば、なぜこのことを学ぶ必要があるのかも納得がいくものと思います。
現場を改善し、リーダーシップを発揮しながらメンバーを引っ張っていくためには、これらの知識は不可欠なものです。是非、再度テキストを確認いただき、自身のものにして下さい。
今回の検定問題で理解の低かった項目に「ムダ=実績-標準」というものがありました。これは、逆に言うと『「ムダ」を無くすためには標準を遵守する』ということになります。標準を遵守する仕組みの一つに、「標準時間を決めて、その時間を守る」という方法があります。
この話をすると、よく現場の方やリーダーから言われるのは、「そんな速い時間では作業ができるはずがない」、「無理に標準時間を守らせるというのは労働強化ではないのか」、「標準時間を守ろうとして作業者があわてて、かえって不良が増えてしまう」というものです。おそらく多くの方がこのように思うでしょう。
実は、標準時間を守るということは、標準作業を守るということで、時間を守る努力をするということではないのです。この点が誤解や反発をまねくきっかけになっている工場を良く見かけます。
標準作業を十分に練習して、それが簡単にできるようなることが目的で、そのことで黙って時間は守れるようになるわけです。つまり標準時間を守るということは、標準作業を十分に練習して、それが簡単にできるようになることを目指していますので、「そんな速い時間では作業ができるはずがない」、「無理に標準時間を守らせるというのは労働強化ではないのか」、「標準時間を守ろうとして作業者があわてて、かえって不良が増えてしまう」ということはなく、不良も着実に減っていくものなのです。
多くの工場でこのことがきちんと理解されずに、標準時間に対する達成度だけが管理されています。今一度、標準時間を遵守する意味を、考えていただくことも必要かもしれません。
今回のベーシック級は、合格率、平均点とも第13回とほぼ同等でした。
カテゴリごとに見てみますと、「品質」単位の問題では『品質管理(広義と狭義)の定義』が理解不足だったようです。ベーシック級は基礎的なことを広く学んでいただきますが、品質でも、そもそも品質管理とは何なのか、何を目的にどんな管理をすることなのかをきちんと理解し、品質意識を高く持っていただくことが重要になります。
「コスト」単位の問題では『編成ロスの計算』の理解が低かったようです。編成ロスは作業分担がどの程度うまくできているかを定量化したものです。作業者のスキルレベルも勘案しながら、いかに編成ロスを少なく、作業分担をするかで、現場の生産性を大きく左右します。すぐに現場で使える内容ですので、計算式の意味も含めて理解し、現場改善に活用してもらいたいと思います。
「納期・生産管理」単位の問題では『計画標準資料』『計画と進み具合の確認』について理解不足だったようです。生産管理関連は、皆さんがお客様との約束(納期)を守るために欠かせない内容になります。どのように計画が立てられ、どのように仕事の進捗を管理すべきかをよく理解して、日々の生産活動に活かしていただけたらと思います。
前述にもあるように、勉強する際には、それらの内容を、どのように現場に活かすべきかを意識しながら、全体を改めて学習していただければ、理解レベルがさらに向上できると思います。
現場改善を進めるときによく見かけるのは、「さあ皆さん、改善案は何かありませんか?」
と検討している場面です。小集団活動などでは、リーダーがメンバーに向けて、よくこのような声かけをしていますね。その場合たいていは、メンバーから意見が出ずにシーンとしてしまうことが多いのではないでしょうか。なぜ、アイデアが出にくいのでしょうか。
それは、アイデアを出すきっかけが無いからなのです。アイデアを出すきっかけとは何か。
それは、アイデア出しの視点なのです。アイデア出しの際、よく活用される視点に「ECRS」というものがあります。
「E(Eliminate:排除)」⇒ その仕事をやめてしまう方法は無いか
「C(Combine:結合と分離)」⇒2つの作業を同時にできないか
「R(Rearrange:入替えと代替)」⇒作業の順番を変えることで速く作業ができないか
「S(Simplify:簡素化)」⇒もっと簡単に作業ができないか(自動化含む)
という改善視点です。
具体的な例をあげると、「E」は「塗装作業で下塗りをしているものを、塗料を変更して下塗りをせずに上塗りのみにする」、「C」は「組立作業をしながら目視検査をしてしまう」、「R」は「複数部品をそれぞれ塗装してから組立てていた作業を、組立てしてから一回で塗装してしまう」、「S」は「部品箱を手元に置いて、手を伸ばす距離を短縮する」などです。
また、これら視点を活用していく時は、その順番も重要です。一般に改善効果が大きいのは「E」→「C」→「R」→「S」の順番になりますので、この順に改善案を皆で出しあいます。「OOO作業について、まずEのアイデアを出してみましょう」という感じで始め、次にCのアイデア、次にRのアイデア、最後にSのアイデア、と進めていきます。
この時に重要なのは、前回の「現場の活動から」でも述べたとおり、「絶対に評価や否定をしてはいけない」ということです。このことを厳守し、ECRSをアイデア出しのきっかけにして改善案を検討いただけると、今までに無いワイガヤ改善検討になると思います。ぜひ、試していただけたらと思います。
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